トロンとは?

トロン概要

携帯電話やAV機器に代表されるコンパクトで高機能な電子機器の開発は、日本の工業技術の得意分野です。半導体不況や製造業の空洞化が叫ばれる中、世界の中で通用する日本の工業技術を維持していくには、こういった得意分野を継続して育てていく必要があります。また、高度な電子機器や組み込み機器を開発する技術は、来るべきユビキタス・コンピューティング環境を実現するための重要な要素技術ともなります。身のまわりに配置された多数のコンピュータの協調動作によって豊かな環境を作り出すという「ユビキタス時代」は、目前に迫っていますが、それを開発する技術力を見た場合、日本の果たす役割は非常に大きいと言えます。

しかしながら、高機能な電子機器や組み込み機器を制御するコンピュータのソフトウェアの開発は、機器の高機能化と厳しいハードウェアリソースの制約により、極めて困難なものとなっています。また、顧客からの要請により開発期間に余裕がないことも多く、ソフトウェア開発の現場には多くの苦労があります。さらに、組み込み機器のソフトウェア開発環境は、これまで標準化の遅れていた分野であり、ミドルウェアやドライバ等のソフトウェア部品の流通がスムーズではないという問題もありました。ユビキタス・コンピューティング環境を実現するには、ソフトウェア開発の効率化が重要な条件になっています。

このような状況に対して、ハードウェアや開発環境まで含めた組み込み機器の開発プラットフォームの標準化を行い、ソフトウェア部品の流通促進や移植性向上を目指して開始されたのが「T-Engine(ティーエンジン)」プロジェクトです。本プロジェクトの推進母体として、国内外の主要な半導体メーカー、ソフトウェアメーカー、組み込み機器メーカー、家電メーカーなどが多数参加する「T-Engineフォーラム」が結成されました。


トロンの心臓部"T-Kernel"

T-Kernelについて

T-Kernelとは、トロンプロジェクトで仕様が標準化された次世代のリアルタイムOSです。30年の実績を持つITRONのリアルタイム性を保ちつつ、機能の追加や標準化の範囲の拡大を行い、高機能な組込み機器の制御用ソフトウェアを効率よく開発できるように設計されています。T-Kernelは、業務用端末やカーナビ、プリンタなど、既に多くの機器に採用されています。

T-Kernel 2.0およびμT-Kernel 2.0について

T-Kernelの基本コンセプトをそのまま継承しつつ、マイクロ秒単位の時間管理機能や大容量デバイスへの対応機能などを強化した最新版のT-Kernelが、2011年5月に公開されたT-Kernel 2.0です。一方、T-Kernel 2.0をベースにさらにコンパクト化を進め、ROMやRAMを内蔵したシングルチップマイコンにも適応させた省資源版のT-KernelがμT-Kernel 2.0です。μT-Kernel 2.0は、今後の応用展開が期待されるM2M(Machine to Machine)やIoT(Internet of Things)を構成する重要な技術の一つとして、センサーノードなどに組み込まれ、各ノードを制御する小型軽量のリアルタイムOSとして利用されることを想定しています。μT-Kernel 2.0の仕様書は、2013年12月のTRONSHOW2014に合わせて公開されました。


パーソナルメディアのトロンへの取り組み

パーソナルメディア株式会社は、組込み機器のためのオープン開発プラットフォームであるトロンプロジェクトに積極的に参加し、開発から技術サポート、販売から出版まで、幅広い事業を展開しています。具体的には、トロンフォーラムのT-Kernelを機能強化して品質保証やサポートサービスを含めた製品版T-Kernelの「PMC T-Kernel」を中心に、T-Kernel用に開発したデバイスドライバ「PMC T-Drivers」やミドルウェア「PMC T-Shell」、お客様がアプリケーションを開発するための開発環境「Eclipse for PMC T-Kernel NEXT」やツール「T-Kernel用タスクトレーサ」など、組込み機器の開発にすぐに役立つPMC T-Kernel関連製品の販売などを通じて、T-Kernelを使った多くの組込み機器の開発に携わっており、その実績はお客様に高くご評価いただいております。

また、T-Kernel 2.0 SWG(サブワーキンググループ)の座長およびμT-Kernel SWGの幹事としてトロンフォーラムの活動に協力し、T-Kernel 2.0、T2EX、μT-Kernel 2.0などの仕様策定を進めてきました。これらの成果は、当社のT-Kernel関連製品に反映されています。

PMC T-Kernelを用いたシステム構成図

PMC(Personal Media Corporation) T-Kernelを用いたシステム構成図

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