2013年9月2日

パーソナルメディア株式会社
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-29-1 コイズミビル
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E-mail:te-sales@personal-media.co.jp
(T-Engineのウェブサイト)http://www.t-engine4u.com/

ITRONのプログラム資産を有効に活用できる「I-rightエンジン」を
パーソナルメディアが新発売

組込みシステムの総合ソリューションを提供するソフトウェアメーカーのパーソナルメディア株式会社(代表取締役:松為彰、本社:東京、電話:03-5759-8305、資本金 1,000万円)は、組込み機器の制御用に開発されたITRONのプログラム資産を有効に活用できる制御用ボードおよび開発環境を、「I-rightエンジン」として製品化し、本日より受注を開始し9月20日より順次出荷いたします。

FA(Factory Automation)向けの制御装置や監視装置、業務用の各種IT機器など、比較的大規模な組込み機器やリアルタイム制御システムでは、民生品と比較して製品寿命の長いものが多く、10年から20年を越えて使われ続けるものも珍しくありません。このような機器でも、長期間の使用中にはハードウェアの故障が生じるほか、技術の進歩などによって、従来と同じハードウェアやCPU、OSの供給を受けることは難しくなってきます。さらに、昨今では半導体ベンダーの再編といった要因も加わり、従来製品との互換性に配慮した後継製品の提供も受けられないケースが増えています。CPUやハードウェア、OSが変わると、従来の機器で使っていた機器制御用のアプリケーションやデバイスドライバについても、そのままでは利用できず、新しい環境の上に移植する必要が生じます。

パーソナルメディアがこの度発売する「I-rightエンジン」は、上記のようなケースにおける移植の手間を最小限に抑えつつ、今後も供給可能な最新のCPUやOSを利用して、お客様の組込み機器を再構築するための製品です。機器にそのまま組み込んで使用できる制御用のボードやコンピュータ上に、従来の組込み機器で幅広く採用されてきた「ITRON」と互換のAPIを持つリアルタイムOSを搭載しており、ITRON上で動作していた制御用アプリケーションなどのプログラム資産を、再コンパイル程度のわずかな工数(*1)で移植して動作させることができます。なお、ITRONとは、1980年代に仕様が策定された組込み制御用のリアルタイムOSであり、現在でも組込み用のOSとしては約50%のシェアを保っています(*2)。

「I-rightエンジン」では、ITRONの後継リアルタイムOSとしてソフトウェアの開発効率を高めた「T-Kernel」を採用し、その上にITRON互換のAPIを提供する「I-right/TK」を搭載しています。このため、ITRON用のプログラムとT-Kernel用のプログラムを共存させ、両者を連携させたシステムを構築することも可能です。T-Kernel上では、ファイルシステムやTCP/IPなどのネットワーク通信機能を含む豊富なミドルウェアや、USB、LAN、SDカード、LCDなどを含む各種デバイスドライバなどが動作しており、ITRON用のプログラムからこれらのミドルウェアやデバイスドライバを呼び出して利用できます。また、ITRONのユーザがT-Kernelの機能を活用する際に参考になる技術資料「ITRONからT-Kernelへの移行ガイド」が製品に付属しています(*3)。

機器の用途や性能、規模などに合わせて選択できるように、「I-rightエンジン」では、「μTeaboard版」、「Teacontroller版」、「TKx86_TX-70版」の3種類のハードウェアをご用意しています。また、カスタム案件として、お客様の指定したボードや、お客様の開発したハードウェアへの移植業務も承ります。

パーソナルメディアは、今後もT-Kernelを核とした各種のソフトウェアの開発やサービスを通じて、さまざまな組込み機器やユビキタス機器の開発に貢献していく所存です。

(*1)
実際の工数については、移植元となるITRONの実装や開発環境などの差異に依存します。当社では、お客様からのご相談に応じて、具体的な調査やお見積りを実施します。
(*2)
T-Engineフォーラム「2012年度組込みシステムにおけるリアルタイムOSの利用動向に関するアンケート調査報告書」
(*3)
本製品の導入を検討中のお客様に対しても、当社からこの技術資料を無償でご提供します。

補足資料

「I-rightエンジン」の特長

  • これまで組込み向けに開発されてきたITRON用のアプリケーションを、最小限の修正で実行できます。また、ITRONに慣れたエンジニアが、ITRONのAPI(Application Program Interface)を使って新規のプログラムを開発することもできます。
  • μITRON4.0のフルセットにほぼ準拠(*4)したAPIを提供します。静的APIなど、μITRON 4.0の特長的な機能も利用できます。
  • T-Kernel用のデバイスドライバやミドルウェアとの連携動作が可能です。たとえば、T-Kernel上で動いているTCP/IPやファイルシステム、グラフィック機能と、既存のITRONのプログラムを組み合わせたシステムを容易に構築できます。
  • Eclipseによる開発が可能です。オープンソースのGUI統合開発環境であるEclipseのT-Kernel対応版「Eclipse for PMC T-Kernel」により、ITRON用のアプリケーションも開発できます。
  • ITRONのユーザがT-Kernelの機能を活用する際に参考になる技術資料「ITRONからT-Kernelへの移行ガイド」が付属しています(*3)。
  • 機器の用途や性能、規模などに合わせて選択できるように、「μTeaboard版」、「Teacontroller版」、「TKx86_TX-70版」の3種類のハードウェアをご用意しています。
(*4)
一部に制限事項があります。100%の互換性を保証するものではありません。

製品ラインナップ

「I-rightエンジン」は、パーソナルメディアのウェブショップからご購入いただけます。

○ ネットワーク機能を持った組込み制御用に
I-rightエンジン/μTeaboard     標準価格37,000円(税別)     9月20日(金)出荷開始
CPU アトメル社AT91M55800A(ARM7TDMI 33MHz)
フラッシュメモリ 4Mバイト
RAM 2Mバイト+CPU内蔵8Kバイト
入出力 I/F シリアル(Dsub9ピン)×1, UART×3, SPI×4,タイマ×6, PWM×4,
ADC×8, DAC×2, GPIO,100BASE-TX/10BASE-T, JTAG I/F
汎用スイッチ ユーザDIPスイッチ×4, ユーザプッシュスイッチ×2, ユーザLED×4
電源 ACアダプタ(5V 300mA)(ACアダプタは別売りオプションです)
寸法 95mm × 75mm (突起物を除く)
外観 μTeaboard/ARM7-AT91の外観
○ 産業機器のリアルタイムコントローラに
I-rightエンジン/Teacontroller     標準価格95,000円(税別)     9月30日(月)出荷開始
CPU ルネサス エレクトロニクス EMMA Mobile1-D (ARM11コア, 500MHz)
Flash ROM 32MB (NOR Flash)
RAM 64MB (CPU内蔵)
eMMC 4GB
LCD 4インチ、TFTカラー、800×480ドット
タッチパネル 抵抗膜式
入出力I/F microSDスロット, LAN, USB-OTG, USB-UART, Sound, HLS,シリアル×2,
フォト・カプラ×4ビット, JTAG-ICE I/F, 照度センサー, 温度センサー
汎用スイッチ チップLED×4, プッシュSW×4
電源 DC +5V、ACアダプタから供給
寸法 CPUボード: 137mm×75mm (突起物を除く)
金属製フレーム: 161mm×87mm (突起物を除く)
外観 Teacontrollerの外観
○ 高速プロセッサ、大容量メモリを活かしたリアルタイム処理に
I-rightエンジン/TKx86_TX-70     標準価格190,000円(税別)     10月15日(火)出荷開始
CPU/Chipset Intel Atom Processor E660 (1.3GHz)
Intel PCH EG20T
Memory DDR2 800MT/s data rates 1GB
Graphics LVDS×1, AnalogRGB×1
入出力 I/F RS-232C×4, CAN×1, GPIO×8bit, USB×6, LAN×3,
SATA×1, mSATA×1, SD/SDIO×2, Audioなど
電源 ACアダプタ
寸法 55mm × 70mm / 125mm × 90mm(専用キャリアボード T75)
ハードウェアはイノテック社TX-70/T75を利用

ITRONとは

ITRON(アイトロン)とは、TRONプロジェクトの最初の成果として1984年から開発が進められた、組込み制御用のリアルタイムOSです。ITRONでは、ソフトウェアの生産性の向上や教育面への配慮から、オープンな標準仕様を定めましたが、その仕様に基づいたOSの実装(プログラム開発)は、誰でも自由に行うことができます。その結果、半導体メーカーや機器メーカーを含む多くのベンダーが、8、16、32ビットなど多くのCPUに対応したITRON仕様のOSを開発しました。開発されたITRONは、家電やAV機器、パソコン周辺機器、OA機器、FA機器など、いろいろな機器に組み込まれ、事実上の業界標準となりました。

2002年からは、ITRONをベースとしてミドルウェアの流通性を高めたT-Kernelが開発されたため、ハイエンドな組込み機器を中心に、ITRONからT-Kernelに移行した例も増えています。しかし、ITRONを使った機器もまだまだ多く、2012年度の調査では、組込み分野におけるITRONのシェアが約50%となっています(*2)。

ITRONの仕様はT-Engineフォーラムによってメンテナンスされており、T-Engineフォーラムのサイトから仕様書をダウンロードできます。

T-Kernelとは

T-Kernelは、組込み機器の開発の効率化やユビキタス・コンピューティング環境の実現を目的に活発な活動を続けるT-Engineフォーラムから、オープンソースのソフトウェアとして提供されるリアルタイムOSです。30年近い実績を持つITRONのリアルタイム性を保ちつつ、ファイル管理やTCP/IPなどの豊富なミドルウェアを搭載することができ、高機能な組込み機器を容易に開発できます。T-Kernelは2002年に開発されて以来、既に10年以上の実績があり、業務用端末やカーナビ、プリンタなど多くの機器に採用されてきました。T-Kernelのバージョンアップ版として2011年5月に公開されたT-Kernel 2.0では、高性能化するハードウェアに対応するため、マイクロ秒単位の時間管理機能や64ビットのデバイスを扱う機能などが強化されています。

パーソナルメディア株式会社について

パーソナルメディア株式会社は、組込み機器のためのオープン開発プラットフォームであるT-Engineプロジェクトに積極的に参加し、開発から技術サポート、販売から出版まで、幅広い事業を展開しています。具体的には、「PMC T-Kernel」のポーティングやチューニング、組込み向けデバイスドライバ「PMC T-Drivers」の開発や移植、x86を使ったリアルタイム制御システムの開発や製品化に役立つ「T-Kernel 2/x86評価キット」「T-Kernel 2/x86ライセンス付SDK」の販売などを通じて、T-Kernelを使った多くの組込み機器の開発に携わっており、その実績はお客様に高くご評価いただいております。

また、T-Kernel 2.0 SWG(サブワーキンググループ)の座長およびμT-Kernel SWGの幹事としてT-Engineフォーラムの活動に協力し、T-Kernel 2.0、T2EXなどの仕様策定を進めてきました。これらの成果は、当社のT-Kernel関連製品に反映されています。

参考情報、リンク集


  • TRON は "The Real-time Operating system Nucleus" の略称です。
  • ITRON、TRON、T-Engine、T-Kernelは、コンピュータの仕様に対する名称であり、特定の商品を指すものではありません。
  • その他商品名等は各社の商標や登録商標です。
  • 本資料に記載された製品の仕様、外観イメージ、価格などは、発表日現在のものです。最終的に販売される製品では、変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。ご購入の際は、最新情報をご確認ください。

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    T-Kernel 2.0ロゴ