2009年6月10日

パーソナルメディア株式会社
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-29-1 コイズミビル
TEL.03-5759-8305 FAX.03-5759-8306
E-mail:te-sales@personal-media.co.jp
(T-Engineのウェブサイト)http://www.t-engine4u.com/

マルチコア版T-Kernelの開発評価用ボードを
パーソナルメディアから発売開始

NaviEngine® の一般向け販売によりMP T-Kernelの普及を促進

組込みシステムの総合ソリューションを提供するソフトウェアメーカーのパーソナルメディア株式会社(代表取締役:松為彰、本社:東京、電話:03- 5759-8305、資本金 1,000万円)は、NECエレクトロニクス株式会社製のマルチコアCPU「NaviEngine」を搭載し、先日T-Engineフォーラムから公開されたマルチコア対応版T-Kernelの実行が可能な開発評価用ボード「MP T-Kernel/NE1評価ボード」を、6月30日より一般向けに発売開始いたします。

【製品名】
MP T-Kernel/NE1評価ボード
【標準価格】
税込 312,900円(本体価格 298,000円)
【発売日】
2009年6月30日
【販売方法】
パーソナルメディアからの直接販売

近年では、組込み機器のさらなる性能向上や省電力化のため、マルチコア技術への関心が高まっています。T-EngineフォーラムではT-Kernelのマルチコア対応を重要な課題として早くから研究開発を進め、今年3月26日にはマルチコア対応版T-Kernelの全ソースコードを含めた成果を一般向けに無償公開しました。マルチコア対応の組込み向けOSがオープンソースとなる例は極めて少なく、組込み業界の注目を集めています。

その一方で、組込み向けマルチコアの技術を評価したり、マルチコアの組込み機器を開発しようとした場合に、マルチコアを搭載した組込み向けのCPUやボードが入手できないという問題もありました。マルチコアのCPUは半導体ベンダー各社で開発が進められておりますが、現時点では特定のお客様にのみ供給されているケースが多く、一般のお客様が誰でも入手できる状況にはなっておりません(*1)。マルチコア対応版のT-Kernel(MP T-Kernel)の入手が容易になったにもかかわらず、それを実行するハードウェアが一般には入手できないという問題が残っていました。

この度パーソナルメディアから発売する「MP T-Kernel/NE1評価ボード」は、上記の問題を解決し、MP T-Kernel(*2)を使って誰でも気軽に組込み向けマルチコア技術の開発や評価ができる商品です(*3)。本ボードのCPUにはARM11™ コアを4つ内蔵したNECエレクトロニクス株式会社製の「NaviEngine」を採用しており、合計で最大1920MIPSの高い性能を、リアルタイム制御からマルチメディア処理まで幅広くご活用いただけます。また、本ボードはT-Engineフォーラムの定める標準T-Engineボードの仕様に準拠しており、120×75mmのコンパクトなボード上にUSB 2.0(2ch)、PCMCIA(*4)、ATA、SATA、タッチパネル付きLCD、シリアル、eTRON-SIM、AUDIO、ローカル拡張バスなど、豊富な入出力I/Fを備えています(*5)。さらに、付属のRGBボード(拡張コネクタボード)を接続することにより、EthernetやVGAモニタ出力も利用できます(*5)。

パーソナルメディアでは、今後もT-EngineやT-Kernelに関連するさまざまな商品の販売やソフトウェアの開発、技術サポートなどのサービスを通じて、T-Engine関連ビジネスを積極的に推進し、組込み機器の開発効率の向上に貢献していく所存です。

(*1)
たとえば、社団法人トロン協会の「次世代組込みRTOS調査ワーキンググループ」が組込み関連業界を対象に2008年に行ったアンケート調査では、マルチコアを採用しない理由として最も多い回答が「マルチコアチップの入手が困難」となっており、「OSや開発環境(コンパイラ・デバッガ)の入手が困難」「ミドルウェアの入手が困難」「マルチコア移行の設計変更によるコスト増が心配、あるいは移行をサポートするツールの入手が困難」などの回答を上回っています。なお、このアンケートを含む調査報告書は、7月下旬にトロ ン協会のウェブサイトで公開される予定です。
(*2)
MP T-Kernelや開発環境は、本製品には付属しません。お客様ご自身で、T-Engineフォーラムのウェブサイトより入手していただく必要があります。
(*3)
本製品には、S-formatのプログラムをシリアル経由でダウンロードしてNOR Flashに書き込み、それを実行するためのブートローダのソフトウェアが含まれます。そのため、本製品と開発用ホストPCがあれば、ICE(In-Circuit Emulator)が無くても、本ボード上でMP T-Kernelの実行を試すことは可能です。ただし、本製品を用いて実際の開発評価を行う場合には、PARTNER-JetなどICEのご利用を推奨いたします。(ICEとは、プログラムのダウンロードやデバッグ等のために、開発対象機器のCPUと開発用ホストとの間に接続して利用するハードウェア機器です。)
本製品には、ブートローダ以外のソフトウェアは付属しません。
(*4)
論理的な仕様はCFに準拠します。また、カードの活線挿抜には対応しておりません。
(*5)
これらの入出力I/Fに対するドライバのソフトウェアは付属しません。

写真

表1. 「MP T-Kernel/NE1評価ボード」の仕様
【CPUボード】
CPU NECエレクトロニクス社製 μPD35001 (NaviEngine 1)
MPCore (ARM11×4) 399MHz, 1920MIPS
DDR2 SDRAM 256Mバイト
NOR Flash 64Mバイト
入出力I/F USB 2.0(Host)×2、PCMCIA(*4)、シリアル(T-Engine用15P)、
eTRON-SIM、ヘッドフォン出力、マイク入力、
拡張バスI/F(PCI互換,04-04キーイング)、ATA(44P)、SATA
その他の機能 RTC
電源 ACアダプタ(付属)
外形寸法 120mm×75mm (突起物を除く)
【RGBボード】(付属)
入出力I/F アナログRGB出力(最大1024×800ドット)、Ethernet、
シリアル(D-SUB 9P)、JTAG-I/F(20P)
外形寸法 74mm×75mm(突起物を除く)
【LCDボード】(オプション)
LCD TFTカラー 240×320ドット、タッチパネル付
入出力I/F ボタンスイッチ(3個)
外形寸法 120mm×75mm(突起物を除く)
「MP T-Kernel/NE1評価ボード」の製品には、CPUボード、RGBボード、電源アダプタ、シリアルケーブルが付属します。
表2. 「MP T-Kernel/NE1評価ボード」のオプション品
PARTNER-Jet 本ボードに対応した、京都マイクロコンピュータ社製の高機能JTAG-ICEです。マルチコアオプションにより、マルチコア対応のデバッグも可能です。
LCDボード タッチパネル付きのLCDボードです。本ボードを含めた、標準T-Engineボード各機種に接続可能です。
開発ベンチ アクリル板や支柱、アクリル製カバーを含む治具セットです。本ボードを含めた、標準T-Engineボード各機種でご利用いただけます。
拡張バス
専用コネクタ
拡張ボード等との接続に利用する、T-Engineボード用のバスコネクタです。

補足資料

T-EngineフォーラムとT-Kernel

ユビキタス・コンピューティング基盤技術の標準化・推進団体であるT-Engineフォーラム(東京都品川区、会長:坂村健・東京大学教授)では、組込みソフトウェアの開発効率向上を目的として、ITRONを機能強化したリアルタイムOS「T-Kernel」や、その周辺のミドルウェア、デバイスドライバ、開発環境などの標準化を進めています。T-Kernelのソースコードは公開されており、T-Licenseというライセンス規約にしたがって誰でも無償で製品に組み込んで利用することができます。既にT-Kernelは、カーナビゲーションシステム、業務用ハンディ端末、パソコン用周辺機器などを含む多くの電子機器に採用されています。

MP T-Kernel

マルチコアやマルチプロセッサに対応したT-KernelがMP T-Kernelです。MP T-Kernelには、AMP(非対称型マルチプロセッサ: Asymmetric Multiple Processor)に対応したAMP T-Kernelと、SMP(対称型マルチプロセッサ: Symmetric Multiple Processor)に対応したSMP T-Kernelがあります。また、AMP T-KernelやSMP T-Kernelにプロセス管理やファイル管理などの機能を追加したAMP T-Kernel Standard Extension (AMP TKSE)およびSMP T-Kernel Standard Extension (SMP TKSE)も開発済みです。

T-Engineフォーラムでは、シングルコア用のT-Kernelに加えて、マルチコア対応のAMP T-Kernel、SMP T-Kernel、AMP TKSE、SMP TKSEについても、すべてのソースコードを公開しています。

NaviEngine

ARM11™ コアを4個内蔵したMPCore™ を搭載し、カーナビ・システム向けとしては世界で初めてSMP型の並列処理に対応。最大1920MIPSという超高速処理を低消費電力で実現するNECエレクトロニクス株式会社製のシステムLSIです。

  • CPUコア: MPCore(ARM11×4個)
  • 命令キャッシュ: CPU 1個につき32Kbyte
  • データキャッシュ: CPU 1個につき32Kbyte
  • 分岐予測およびホールド機能を備えた8段パイプライン
  • VFPコプロセッサを各CPUコアに装備
  • 最大動作周波数: 399MHz
  • 処理性能: 1920MIPS

パーソナルメディアとT-Engineプロジェクト

パーソナルメディアは、組込み機器のためのオープン開発プラットフォームであるT-Engineプロジェクトに積極的に参加し、開発から技術サポート、販売から出版まで、幅広い事業を展開しています。TRONの25年間の歴史の中でパーソナルメディアが蓄積した高度な技術力とノウハウ、および協力各社との緊密なパートナーシップにより、組込みシステム全般にわたるソリューションをご提供します。

具体的には、リアルタイムOS「PMC T-Kernel」のポーティングやチューニング、組込み向けデバイスドライバ「PMC T-Drivers」の開発や移植、多漢字対応のGUIミドルウェア「PMC T-Shell」や各種プロトコルスタック、ウェブブラウザなどの移植やご提供、技術セミナーや技術サポートなどの業務を中心に、多くのT-Engine 応用製品の開発に関わり、その実績を高くご評価いただいております。また、インテル® Atom™プロセッサなどx86系のプロセッサで動作する「T-Kernel/x86評価キット」やx86用のT-Kernelに製品化ライセンスを含めた「T-Kernel/x86製品開発パッケージ」、各種CPUを搭載した開発評価用ボード「T-Engine開発キット」、安価なT-Engineアプライアンスである「Teatouch」 「Teaboard2」 「μTeaboard」、これらのボード上で動作するデバイスドライバやミドルウェア、T-Kernelの上でITRONのAPIを提供する「I-right/TK」など、幅広い組込み向け製品をご提供しております。

参考資料


  • TRON は "The Real-time Operating system Nucleus" の略称です。
  • TRON, BTRON, ITRON, eTRON, T-Engine,μT-Engine, T-Monitor, T-Kernel はコンピュータの仕様に対する名称であり、特定の商品を指すものではありません。
  • NaviEngineはNECエレクトロニクス株式会社の日本国内における登録商標です。
  • ARM11およびMPCoreはEUおよび他国におけるARM Limitedの商標です。
  • その他の商品名などは各社の商標または登録商標です。
  • 本資料に記載された製品の仕様、外観イメージ、価格などは、発表日現在のものです。最終的に販売される製品では、変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。ご購入の際は、最新情報をご確認ください。